会田誠トークショーにこわいもの見たさで行ってきた。思ったよりこわくなかったし、思っていることが同世代だなあと勝手に感じました。
2010/5/15 19:30〜21:30 ミズマアートギャラリー 市谷田町
以下トークショーのメモ箇条書き。(三)ギャラリーの三潴さん。
・現代美術作家のトーク欧米では盛ん。わかりずらいものをわかりやすくするため。
・自分の作品には説明はいらない。したくない。見ればわかる。
「灰色の山」について
・背広がかきたかった。背広はああいうシチュエーションが似合う。
・日本人=背広とよく言われるが、白人も黒人も混ぜ混ぜでかいた。世界中のホワイトカラーの普遍的な服装
・女性がいない。「ジューサーミキサー」と対の作品。「ジューサーミキサー」はなぜ女性だけなのかとよく言われる、そのほうがジュースがおいしそうでしょと答えてまた怒られる。男性は背広が主役 ⇔ 女性はかわいい顔、髪、体が主役
・過労死ではない、911テロのイメージなくはない。テロの映像で(自分達がよく使っている)A4サイズの紙が舞っていたのがリアルだった。「灰色の山」にもかく予定。
・ある時期から人工的に作られた人種=ホワイトカラー、背広をやっつけたい
・小学校の社会科で一次産業→二次産業→三次産業と占める割合の大きいものがかわっていった。「サービス業」横に流すだけの何も産まない仕事が大半でいいのかという疑問。
・絵の中にあるOA機器(最新のものだけでなく古いものから新しいものまで)長いスパンでかきたかった。黒電話、パーソナルじゃないコンピュータなど。
(三)・群衆をかくのはテクニックが必要。群衆の絵として藤田嗣治アッツ島玉砕」と会田さんの「大皇乃敝尓許曽死米」(おおきみのへにこそしなめ)
・「大皇乃敝尓許曽死米」は現代美術らしいこと、頭でかいた。説明をしなくちゃいけない、よくない作品。
・死体がたくさんあるのはよくあるテーマ。会田さんがかいたのは地獄絵図ではなく(血は流れていない)死んだ人の霊の山
(三)・会田さんは取扱危険作家で無冠の帝王。保守的な水戸芸ではミュータント花子の屏風は閉じて展示(?)会田誠の絵は見た人をどきっとさせる。センセーショナルで何か意味があるのではないかと思わせる。会田さんは個展をやったことがない、誘いもうけない
・上野の森で山口晃と二人展の時は展示できないリストを渡された。ジューサーミキサーもその中に入っていたがロダンの地獄門にインスパイアされたと言ったら通った。
(三)・ベネチアビエンナーレで日本人が賞をとるためには日本人の審査員をいれるところから。現代美術は英語圏、欧米が基準。日本なんて考えてくれない。日本人の作品について説明しなくてはいけない。

「1+1=2」について
・流行遅れのかき方。80年代。ニューペインティング。
・中国で公開制作中は合宿みたいだった。「灰色の山」をちまちまかいていてストレスがたまっていたときに大きくて安い絵の具チューブを見てかきたくなった。かくのが気持ちよかった。
・10年ごと位に流行の波がある。作家はそれに振り回される。一時期時代の寵児になって、忘れ去られて、また復活して。
(三)・自分のスタイルを持つのはつまらない。作品を見て作家がわかるではマンネリになる。
・自分はいろんなかき方をするタイプ。いろいろやりたいがそれが通じるのは国内どまり。親身、ドメスティックでないと。自分はニューヨーカーではないから。わかりやすくはしたくない。世界的存在になあることは忸怩たる思いであきらめている。絵バカ(平井堅歌バカ」のパロディ)というのもローカルネタ。
(三)・「世界」はあっち(欧米)で日本は辺境。だったけど変わってきている。
・日本の運の悪さ。一昔前(欧米が中心)から変わって今売り出すときなのに、中国や他のアジアの国に押されてしまっている。日本の若手にパワーがない(?)
(三)・90年代村上隆が注目されたがその後は中国に流れた。中国の作品は欧米のスタイルにのっとっている。量産が(ある程度)必要(日本はできないけど中国はできる)。体育館みたいな個人のスタジオがいくつもある。(弟子がかいてサインだけ作家などということも行われていてそのしっぺ返しが今起きてるらしい)中国は80年代末に初めてヌードモデルを使って、それまで現代美術の文化がなかった。いきなりポップから入り、売れてしまった。アジアの若者は日本と違って目がキラキラしている。
・泉太郎みたいな日本のへたれは進化の証拠
会田さんトイレのため三潴さんによる会田誠解説
(三)・センセーショナル、こたつ派
(三)・戦後(西洋)美術に対する皮肉、英語中心のグローバリジェーションへの抵抗
(三)・トランスレーター、言語が一つでないことがもどかしい。言語も文化も翻訳が必要。
会田さん戻る
・高いインテリジェンスを持った人は多文化・多言語を理解できるかもしれない。
 世界中がそういう人だけだったら交流すればいいけど、そういう人ばかりじゃないから。鎖国して交流しないほうが平和なのでは。
・17歳の時小説家、漫画家、映画監督になりたかった。その仕事はありのまま作品を作るのが普通なのに美術だけ違う。日本のありのままを出すのは美術では禁じ手。ニューヨーカーはありのままは禁じ手なんて一生考えない。美術作品のいいところは主張のないところで自分はそれを利用している。
Q&A
最近楽しかったことは?
・ディズニーのディズニーランドみたいな、会田ランドみたいな立体作品を思いついた。タイトル「ザ・シット」
・(現代美術の)歴史がないのに元気がある中国・韓国。歴史が中途半端にある元気の悪い日本≒日本の近代美術≒日本の美大東京芸大
「よかまん」について
・「よかちん」という芸大内にあった宴会芸(?)をもとにしてる。自分が若い頃は現代美術やっちゃいけなかったので反抗のつもりでやっていた。今はグローバルでスタイリッシュ、現代美術が奨励されている。よかちんもやられていない。
・語りにくいようにわざと作ってるから語りたくない。理屈は通ってないがいろんな気持ちをこめた(今の若い人に向けて?)

トークショー終わりにお酒を振舞われていたので一杯いただいて帰りました。日本の美術の現状、国内においての、世界の中での、の話を熱心にされているのを見ていて、爆笑問題のニッポンの教養を思い出しました。学問の分野は違っても(まあ「学」自体人間が作ったんだし)話し合ったり考えたりすることは根本で同じだなあと感じました。